『IoTで製造業効率化』
ティラド、陣屋コネクトと新会社
―中小向けシステム外販自動車向け熱交換器大手のティラドは、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を活用したクラウド型の業務支援サービスの開発に乗り出す。社内用のSNSや顧客、設備の管理システムなどを中心に、中小の製造業向けに外販する新会社を設立した。ITを駆使した業務効率化を進め、自動車業界の産業構造変化に備える。
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旅館向けの業務支援サービスを手掛ける陣屋コネクト(神奈川県秦野市)と共同出資の新会社「ティラドコネクト」を設立した。同社と連携して製造業向けの業務効率化システムを開発する計画だ。
陣屋コネクトは6月の株主総会後にティラド社長に就任した宮崎富夫氏らが12年に設立した。宿泊予約や顧客情報管理(CRM)、社内SNSなどの旅館向けサービス「陣屋コネクト」を提供しており、全国の旅館300施設以上の利用実績がある。CRM最大手の米セールスフォース・ドットコムのシステムをベースに開発した。
ティラドは陣屋コネクトが展開するサービスのうち、すでに設備管理や社内の情報共有などの機能を自社で導入して活用している。今後は外販を想定し、製造業の現場で不可欠な品質や原価管理などに使える新機能をティラドコネクトと開発していく。
工場のラインの品質管理に使うカメラやセンサー類は汎用品を用い、サービス開発はデータを管理・共有する仕組みに特化する。顧客からの要望があれば、コンサルティングの形式でセンサー類の選定や設置を支援する。採用企業数を拡大するため、利用料は陣屋コネクトと同じく従業員1人あたり月額で600~3500円程度に抑える方針だ。
ティラドは四輪、二輪車や建設機械向けのラジエーターやオイルクーラーなどの熱交換器が主力。ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の普及で、中期的に市場は拡大するのが確実だ。一方で、長期的に内燃機関を積まない電気自動車(EV)が自動車の主流になれば本体の小型化が加速し、熱交換器の単価が下がる可能性も懸念されている。
自動車産業は「100年に一度」ともされる国際競争の転換期を迎えており、コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化の頭文字をとって「CASE」と呼ぶ先端分野の開発競争が過熱している。とりわけ電動化は業界の勢力図を書き換える可能性がある。ティラドも先行きの市場環境の変化を見据え、業務の効率化で先行して経営体質を強化する狙いがある。(川上宗馬)